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本書は関数解析の入門書である。 関数解析の理論自体は抽象的なものであるが,その起源は積分方程式など解析学の具体的な問題に根ざしている。そして,現在における関数解析の魅力の一つは,その広い応用性にあるといっても過言ではないであろう。なかでも,本書で注目するのは,種々の関数空間を舞台とする関数解析の応用である。解析学の諸問題を関数空間における問題として捉え,関数解析的な考え方・手法の活用を計ることは,偏微分方程式論への応用を要として,近年急速に普及しつつある。いまや関数解析は解析学の諸分野はもとより,数理物理・数理工学を含む応用数学の諸分野においても,必須の道具となりつつあるようにみえる。このような状況のもとで,関数空間における関数解析を重視する立場に立つ入門書には,なお存在理由がありうると考え,本書を執筆した。 しかしながら,本書は関数解析の応用を論じた本ではない。入門書であるからには,読者が関数解析の基礎理論を一通り修得されることを第一の目標にしている。本書で著者なりの配慮を試みたのは,説明のなかで関数空間での応用への足がかりを固めながら,段々に抽象的理論に進むようにしたことである。その結果,本書の構成はやや変わったものとなった。第1章,第3章を除いて,前半第6章までは,専ら関数空間の話である。そこでは,Fourier解析の初歩に比較的多くの頁をさきつつSobolev空間に到り,最後にLaplaceの方程式のDiricblet問題を論じて,関数解析的方法の有効性を示した。後半第7章以下では,線形作用素論を中心に,関数解析の基礎理論を述べた。前半の材料は,後半でも例として活用されている。
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